はたらき方の話し合いガイド

旦那が激務すぎる。
辞めてほしいと思う前に

「激務」を感覚ではなく数字で確かめる方法と、確かめたあとの3つの分かれ道を整理しました。

帰ってくるのは毎日日付が変わってから。休日も寝ているだけ。このまま働き続けて大丈夫なのかと不安になる一方で、「辞めてほしい」と言っていいのかも分からない。この記事は、その迷いを「感覚」から「数字」に置き換えるところから始めます。

  • 家にいる側から、旦那の残業時間を概算する方法
  • 法律の上限と、労災認定の目安という2つのものさし
  • 数字が出たあとに分かれる3つのケース
  • 辞める以外に取れる選択肢

結論:「辞めてほしい」の前に、月の残業時間を数える

先に結論です。話し合いを始める前に、旦那が月に何時間残業しているかを数えてください。

理由は2つあります。ひとつは、「激務」という言葉が人によって指す量がまるで違うからです。月30時間の残業を激務と感じる家庭もあれば、月90時間を普通だと思っている職場もあります。お互いが違う量を思い浮かべたまま話すと、話し合いは平行線になります。

もうひとつは、数字には反論しづらいからです。「働きすぎだよ」は感想なので言い返せますが、「今月、帰りが23時を過ぎた日が15日あった」は事実なので言い返せません。数字は責める道具ではなく、二人が同じものを見るための共通の物差しになります。

家にいる側から残業時間を数える方法

本人に勤怠を出してもらうのが正確ですが、それを頼むこと自体が言い出しにくいはずです。帰宅時間からでも十分に概算できます。

1日あたりの残業時間
(帰宅時刻 − 所定の終業時刻) − 通勤時間 = おおよその残業時間

1か月の残業時間
1日あたりの残業時間 × 出勤日数 + 休日出勤した時間

たとえば定時が18時、帰宅が23時、通勤に1時間かかる場合、1日あたりおよそ4時間です。出勤日数が20日なら、それだけで月80時間になります。ここに休日出勤が加わると、さらに増えます。

給与明細の残業手当の欄からも確認できますが、みなし残業(固定残業代)や裁量労働制の場合、明細の数字と実際の労働時間が一致しないことがあります。明細が少なく見えても、実態はそうとは限りません。

数える期間は1か月だけでなく、できれば直近3〜6か月分を見てください。次の項目で分かるとおり、目安の一つが数か月の平均で定められているためです。

2つのものさし ― 法律の上限と、労災認定の目安

数えた時間をどう読むか。公的な基準が2種類あります。

ものさし1:法律で定められた残業時間の上限

労働基準法では、時間外労働の上限が次のように定められています。

区分上限
原則月45時間・年360時間
特別条項付きの労使協定がある場合年720時間以内/時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満/2〜6か月の平均が80時間以内/月45時間を超えられるのは年6回まで

つまり、月45時間を超えているかどうかが最初の目安です。そして特別条項があっても、月100時間や平均80時間という線は超えられません。

出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html

ものさし2:労災認定で使われる時間の目安

脳・心臓疾患の労災認定基準では、発症前1か月におおむね100時間、または発症前2〜6か月の平均でおおむね月80時間を超える時間外労働があった場合、業務との関連性が強いとされています。令和3年9月の改正では、この水準に達していなくても、勤務時間の不規則さや出張の多さといった労働時間以外の負荷とあわせて総合的に評価されるようになりました。

これは健康状態を判定するものではなく、あくまで労災認定の際に使われる時間の目安です。ただ、公的に「この時間を超えると業務との関連が強い」とされている線がどこにあるかを知っておくと、話し合いの材料になります。

出典:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定基準を改正しました」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21017.html

数字が出たら、次は「その働き方を続けるのか、変えるのか」の話になります。転職まで踏み込むかどうかを決める前でも、転職エージェント診断で相談先のタイプだけ見ておくと、選択肢の広さが分かります(無料・登録不要)。

数字が出たあと ― 3つの分かれ道

数えた結果によって、次に取るべき行動が変わります。

ケース1:月100時間超、または数か月平均で80時間超

特別条項があっても超えられない水準です。この場合、問題は「本人が辞めるかどうか」より前に、勤務先の労働時間の管理そのものにあります。会社に是正を求める、労働基準監督署の相談窓口を使う、といった選択肢が先に来ます。転職を考えるとしても、在籍したまま情報を集める進め方ができます。

ケース2:月45〜80時間

法律の枠内には収まっている可能性が高い水準です。ここで「違法だから辞めよう」という話にすると、事実と違うので本人に反論されます。合法だがきつい、という前提で話す必要があります。部署の異動、業務の分担、働き方の相談といった、辞める以外の手段が現実的な範囲です。

ケース3:月45時間未満

数えてみたら思ったより少なかった、というケースです。この場合、つらさの原因は労働時間の長さ以外にあります。通勤時間が長い、休憩が取れていない、持ち帰りの仕事がある、勤務が不規則、といった要因です。「残業を減らす」では解決しないので、何がいちばん負担なのかを本人に聞くところからやり直します。

どのケースでも共通するのは、「辞める」は最初の選択肢ではないということです。数字を見てから選ぶほうが、結果的に本人も納得しやすくなります。

数字を伝えるときの注意

数えた数字をそのままぶつけると、監視されていたように受け取られることがあります。伝え方には少しコツがあります。

  • 「調べた」ではなく「数えてみたら驚いた」と、自分の感想として出す
  • 数字を出した直後に結論(辞めるべき)をつなげない。いったん相手の反応を待つ
  • 平日の帰宅直後ではなく、休日の午前など余裕がある時間に話す

具体的な言い方や、逆効果になりやすいNGな表現については、こちらで詳しくまとめています。

よくある質問

旦那の残業時間はどうやって数えればいいですか?

所定の終業時刻と実際の帰宅時刻の差から、通勤にかかる時間を引くとおおよその残業時間が出ます。これに出勤日数を掛け、休日出勤の時間を足すと月の目安になります。給与明細の残業手当の欄からも確認できますが、みなし残業や裁量労働の場合は実態と一致しないことがあります。

残業は月何時間から多いと言えますか?

法律上の原則的な上限は月45時間・年360時間です。特別条項付きの労使協定がある場合でも、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、2〜6か月平均で80時間以内という上限があります。まず月45時間を超えているかどうかが最初の目安になります。

すぐ辞めるべきかどうか、どう判断すればいいですか?

辞める以外にも、勤務先に労働時間の是正を求める、部署の異動を相談する、といった選択肢があります。数字を確認したうえで、どの選択肢が現実的かを本人と一緒に考えるほうが、いきなり退職を勧めるより話が進みやすくなります。

残業時間が思ったより少なかった場合はどうすればいいですか?

労働時間以外に負担の原因がある可能性があります。通勤時間の長さ、休憩が取れているか、持ち帰りの仕事があるか、勤務が不規則かなどです。時間の長さだけが負担の理由とは限らないため、何がいちばんつらいのかを本人に聞いてみるところから始めます。

まとめ

  • 「激務」は人によって指す量が違うので、まず月の残業時間を数える
  • (帰宅時刻 − 終業時刻)− 通勤時間 × 出勤日数 + 休日出勤で概算できる
  • 定時18時・帰宅23時・通勤1時間なら、20日出勤で月80時間になる
  • みなし残業や裁量労働だと、給与明細の数字と実態はずれることがある
  • 法律上の原則は月45時間・年360時間。特別条項があっても月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
  • 月100時間超・平均80時間超なら、辞める前に勤務先の労働時間管理の問題
  • 月45〜80時間なら「合法だがきつい」前提で、異動や働き方の相談から
  • 月45時間未満なら、つらさの原因は時間以外にある
  • 数字は責める道具ではなく、二人が同じものを見るための物差し

数えてみて「この働き方は変えたほうがいい」と感じたら、次は選択肢を知る段階です。辞めるかどうかを決める前でも、相談先にどんなタイプがあるのかは調べられます。

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