今はまだいい。でもこの先ずっとこの働き方なんだろうか。そう思っても、「正社員になってよ」の一言は言いづらいものです。お金の話をしているつもりが、本人の価値を測っているように聞こえてしまうからです。この記事では、その不安の中身を制度の差として分解します。
- 統計で見た正社員と非正規の平均給与の開き
- 加入する年金制度が変わるという差
- 社会保険と雇用保険でつく差
- 責めずに切り出すための順番
結論:不安の正体は「今の収入」ではなく「差が開き続けること」
「正社員になってほしい」と思うとき、多くの場合、今この瞬間の生活が回らないわけではありません。心配なのは時間が経つほど差が開いていく仕組みのほうです。
差がつく場所は主に3つあります。賃金、年金、そして社会保険です。順に確認します。
差1:賃金 ― 統計で見た開き
国税庁の民間給与実態統計調査(令和6年分)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は次のとおりです。
| 区分 | 平均給与 |
|---|---|
| 正規 | 545万円 |
| 非正規 | 206万円 |
| 全体 | 478万円 |
もちろんこれは全体の平均であり、個々の職種や働き方で状況は変わります。非正規でも高い収入を得ている人はいますし、正社員でも低い場合はあります。
ただ、全体としての水準に開きがあること自体は、統計として示されているという点は押さえておく価値があります。これは感情ではなく事実なので、話し合いの土台として使えます。
出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2024.htm
差2:年金 ― 加入する制度そのものが変わる
ここが見落とされやすい部分です。差がつくのは金額だけでなく、入っている制度そのものです。
| 区分 | 加入する制度 | 保険料 |
|---|---|---|
| 第2号被保険者 (厚生年金保険の適用事業所に常用的に使用される方) | 国民年金と厚生年金保険の両方 | 勤務先が手続きを行う |
| 第1号被保険者 (自営業者・学生・無職の方など) | 国民年金のみ | 本人が納付や免除の手続きを行う |
つまり働き方によって、将来受け取る年金の構成そのものが変わります。この差は毎年少しずつ積み上がるため、後から取り返しにくい部分です。
出典:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/20140710.html
差3:社会保険と雇用保険 ― 何かあったときの受け皿
3つ目は、想定外のことが起きたときの備えです。
- 健康保険 — 勤務先の健康保険に加入していれば、傷病手当金などの給付の対象になりえます
- 雇用保険 — 加入していれば、離職したときの給付や教育訓練の給付の対象になりえます
- 厚生年金 — 老齢の年金だけでなく、障害や遺族の年金にも関わります
いずれも要件があり、加入の有無は勤務形態や労働時間によって変わります。「非正規だから必ず入れない」わけではありませんが、加入しているかどうかで、いざというときの受け皿の厚みが変わります。
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伝え方 ― 雇用形態の話から入らない
3つの差を知ったうえで、次は伝え方です。ここで「正社員になってよ」と結論から入ると、ほぼ確実に反発されます。雇用形態の指摘は、本人の能力や選択への評価として受け取られるからです。
順番を変えます。
- ✕「そろそろ正社員になったら?」 → 現状への評価になる
- ○「何年後くらいに一緒に住みたい?」 → 二人の計画の確認になる
将来の計画が先にあれば、そこに必要な条件として働き方の話が自然に出てきます。順番を変えるだけで、同じ内容でも受け取られ方が変わります。
また、非正規で働いている理由は人によって違います。やりたいことがあって選んでいる場合と、就職がうまくいかなかった場合とでは、必要な手当てがまるで変わります。説得の前に理由を聞くのが遠回りに見えて近道です。
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よくある質問
正社員と非正規で、平均給与はどれくらい違いますか?
国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は正規が545万円、非正規が206万円でした。これは平均であり個々の状況で変わりますが、雇用形態によって全体の水準に開きがあることは統計として示されています。
雇用形態で将来の年金は変わりますか?
変わります。厚生年金保険の適用事業所に常用的に使用される方は国民年金と厚生年金保険の両方に加入する第2号被保険者になります。一方、自営業者や学生などの第1号被保険者は国民年金のみです。加入する制度が違うため、将来受け取る年金の構成も変わります。
「正社員になってほしい」と直接言ってもいいですか?
直接伝えると、今の働き方を選んだ本人の判断を否定する形になりやすく、反発を招きがちです。雇用形態そのものではなく、二人がこの先どうしたいかという将来の話から入り、その計画に今の働き方が合うかを一緒に確認する順番のほうが話が進みやすくなります。
本人にその気がない場合はどうすればいいですか?
非正規で働いている理由は人によって異なり、やりたいことがある場合もあれば、正社員での就職がうまくいかなかった場合もあります。理由によって必要な手当ては変わるため、説得を続けるより、なぜ今の働き方なのかを聞くところから始めるほうが現実的です。
まとめ
- 不安の正体は今の収入ではなく、差が開き続ける仕組みのほう
- 賃金は統計で正規545万円・非正規206万円(令和6年分・平均)
- 年金は金額だけでなく、加入する制度そのものが変わる
- 第2号は国民年金と厚生年金の両方、第1号は国民年金のみ
- 健康保険・雇用保険は、いざというときの受け皿の厚みに関わる
- 非正規でも加入できる場合はある。勤務形態と労働時間による
- 「正社員になって」と結論から入ると、能力への評価として伝わる
- 将来の計画の話を先にすると、働き方の話が自然に出てくる
- 説得の前に、なぜ今の働き方なのかを聞く
差の中身が分かると、話し合いは責める形になりにくくなります。相談先を知る段階まで来たら、選択肢を一緒に見てみてください。
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あわせて確認しておきたいこと
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- 保険の見直し診断 — 社会保険の外側を自分で備える場合の入口として