はたらき方の話し合いガイド

夫の転勤に
ついていきたくない

断れるものなのか。法律上の配慮義務と、選択肢ごとのコストを整理しました。

辞令が出た。ついていくのが当然という空気になっている。でも自分の仕事も、子どもの学校も、ここにある。そう思っていても、会社の決定に口を出せるものなのか分からない——この記事は、その「分からない」を制度と金額で埋めるためのものです。

  • 同じことを思っている人がどれくらいいるのか
  • 転勤について、法律が事業主に求めていること
  • 配慮義務でできること・できないこと
  • 単身赴任・帯同・転職のコスト比較

まず前提:珍しい悩みではない

言い出しにくさの一因は、「こんなことを思うのは自分だけかもしれない」という感覚にあります。ここは先に外しておきます。

@DIMEが報じた調査によると、妻の3人に1人が「出世しなくてもいいから夫に転勤を断ってほしいと思ったことがある」と回答しています。少数派の我がままではなく、よくある事情だということです。

出典:@DIME https://dime.jp/genre/664330/

法律は何と言っているのか ― 事業主の「配慮義務」

ここが、知られていないわりに重要な部分です。

育児・介護休業法では、事業主が労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合、その労働者の子の養育または家族の介護の状況に配慮しなければならないと定められています。

厚生労働省の資料では、配慮の内容として次のような例が挙げられています。

  • 労働者の子の養育または家族の介護の状況を把握すること
  • 労働者本人の意向をしんしゃくすること
  • 配置の変更をした場合の、養育または介護の代替手段の有無を確認すること

出典:厚生労働省「転勤についての配慮」https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/ryouritu/pamph/dl/01_0004.pdf

ここを誤解しないこと

これは「転勤を断れる権利」ではありません。事業主に対して、事情を把握し意向をくみ取ることを求める規定です。転勤そのものを取りやめる義務までは定められていません。

それでも意味があるのは、「言っても無駄」ではないと分かることです。事情を伝えること自体が制度の中で想定されている行為なので、遠慮して黙っている必要はありません。

なお、転勤命令が有効かどうかは就業規則の定めや個別の事情で判断が変わります。具体的な争いになりそうな場合は、都道府県労働局の相談窓口や弁護士に相談してください。

選択肢は4つ。それぞれのコストを出す

「ついていく/ついていかない」の二択で考えると行き詰まります。実際には4つあります。

選択肢主なコスト確認すること
単身赴任住居が二重になる。生活時間が合わなくなる単身赴任手当・帰省旅費の有無と金額
家族で帯同配偶者の仕事、子どもの学校環境が変わる赴任先での就業機会。転居費用の負担範囲
勤務先で調整希望が通るとは限らない事情を伝える窓口。異動の時期をずらせるか
本人が転職収入が変動しうる。時間がかかる転勤の有無を条件にした求人の状況

先に手当の金額を確認してください。単身赴任手当や帰省旅費の有無で、単身赴任の実質的な負担はかなり変わります。ここが分からないまま「二重生活は無理」と決めてしまうと、判断を誤ります。

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話し合いの順番 ― 転職の話は最後に出す

いちばんやりがちなのが、いきなり「転勤がない会社に移ってほしい」と言ってしまうことです。これは相手にとって、キャリアごと否定された話に聞こえます。

順番はこうです。

  • 1. 会社の条件を確認する(手当・期間・帰省旅費)
  • 2. 勤務先に事情を伝えられるか相談する(配慮義務の話はここ)
  • 3. 4つの選択肢のコストを一緒に並べる
  • 4. それでも折り合わない場合に、転職を選択肢に入れる

1と2を飛ばして4に行くと、話し合いではなく要求になります。順番を守ることが、そのまま説得力になります。

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よくある質問

夫の転勤は断れるものなのですか?

転勤命令が有効かどうかは、就業規則の定めや個別の事情によって判断が変わるため、一律には言えません。ただし育児・介護休業法では、事業主が就業の場所の変更を伴う配置の変更をしようとする場合、労働者の子の養育や家族の介護の状況に配慮することが定められています。断る権利ではありませんが、事情を伝える根拠にはなります。

配慮義務とは具体的に何をしてもらえるのですか?

厚生労働省の資料では、配慮の内容として、労働者の子の養育や家族の介護の状況を把握すること、労働者本人の意向をしんしゃくすること、配置の変更をした場合の養育や介護の代替手段の有無を確認することなどが挙げられています。転勤を必ず取りやめる義務ではない点に注意が必要です。

単身赴任と家族での帯同はどちらがいいですか?

どちらにも費用がかかるため、金額を出してから比べるのが確実です。単身赴任は住居が二重になる一方、帯同は配偶者の仕事や子どもの学校環境が変わります。手当の有無や金額は勤務先によって異なるため、まず条件を確認するところから始めます。

夫に転職してもらうのは現実的ですか?

選択肢のひとつではありますが、最初に出すと話がこじれやすくなります。まず勤務先の中で調整できる余地があるかを確認し、それが難しい場合の選択肢として検討するほうが、本人も受け入れやすくなります。

まとめ

  • 妻の3人に1人が「転勤を断ってほしいと思ったことがある」と回答した調査がある
  • 育児・介護休業法は、転勤の際に子の養育・家族の介護の状況への配慮を事業主に求めている
  • 配慮の例は、状況の把握・本人の意向のしんしゃく・代替手段の確認
  • ただしこれは「断れる権利」ではない。転勤を取りやめる義務までは定められていない
  • それでも「言っても無駄」ではない。事情を伝えるのは想定された行為
  • 選択肢は単身赴任・帯同・勤務先で調整・転職の4つ
  • 単身赴任手当や帰省旅費の有無で実質的な負担は大きく変わる
  • 話す順番は、条件確認 → 勤務先に相談 → コスト比較 → 最後に転職

制度と金額が分かると、話し合いは感情のぶつけ合いではなくなります。最後の選択肢まで来たときのために、相談先の種類だけ見ておくと動きが早くなります。

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