前回、メールマガジンに住所を載せる義務があると知って、バーチャルオフィスを契約しました。そのとき審査に出した書類には「開業届は準備中」と書いています。準備中のまま2か月近く放置していた開業届を、ようやく出しました。作成そのものは無料で13分。つまずいたのは、そのあとの「出し方」のほうでした。
- 開業届の作成にかかった実測時間と、広告の表示との差
- 入力画面で手が止まった項目と、実際に選んだもの
- 青色申告の期限が、休日に重なって4日延びた理由
- 郵送先が税務署の住所ではなかったこと
- 2025年から、提出した証拠の残し方が変わったこと
結論:開業届は無料で作れる。つまずくのは出し方のほう
会計ソフト会社が無料で提供している作成サービスを使えば、画面の質問に答えるだけで開業届が完成します。費用はかかりません。税務署に相談に行く必要もありません。
ところが、できあがった書類を出す段になって、調べないとわからないことが3つ出てきました。期限の数え方、郵送先の住所、提出した証拠の残し方です。どれも作成サービスの画面には書かれていない話でした。
この記事は、その3つでつまずいた記録です。開業届そのものの書き方より、こちらのほうが役に立つと思います。
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なぜ今になって開業届を出したのか
収入はまだ数万円の規模です。それでも出すことにしたのは、「開業届の控え」を求められる場面が見えてきたからです。
前回のバーチャルオフィスの審査では、開業届がない代わりに事業概要書を1枚作って通しました。ただ、屋号付きの銀行口座を作ろうとすると、ほぼ確実に開業届の控えを出すよう言われます。事業用のクレジットカードや、一部のサービスの法人・事業者向けプランでも同じです。
もうひとつは青色申告です。帳簿をつけて控除を受けるには、開業届とセットで青色申告承認申請書を出しておく必要があります。こちらには期限があり、逃すと1年待つことになります。結果的に、この期限がこの記事でいちばん長くなるセクションになりました。
なお、開業届の提出期限は、2026年1月1日以後の開業から「開業した年分の確定申告期限(翌年3月15日)まで」に変わりました(所得税法229条。それまでは事業開始から1か月以内)。開業から2か月後の私の提出も期限内で、遅れた場合の罰則規定もありません。焦る必要があるのは青色申告のほうです。開業日を入れると期限を日付で出せるカレンダーも作りました → 開業届・青色申告の期限カレンダー
作成にかかった時間は13分26秒
サービスの紹介ページには「登録は最短1分」と書かれています。実際の記録はこうでした。
- 16:16:08作成サービスのページを開く
- 16:29:34開業届と青色申告承認申請書の作成が完了
13分26秒。「最短1分」は、おそらくメールアドレスとパスワードを入れてアカウントを作るところまでの時間です。書類を作り切るまでとなると、この10倍以上かかりました。
とはいえ、13分で税務署に出せる書類が2種類できるのは十分に速いと思います。時間を取られたのは入力の操作ではなく、選択肢の前で考え込んだ時間でした。具体的には次の3か所です。
- 屋号をつけるかどうか
- 仕事の概要に何と書くか
- 青色申告にするかどうか
手が止まった項目と、実際に選んだもの
画面に出てくる順に並べます。迷わない項目は飛ばしています。
屋号:「つける」
すでに使っている名前があったので、そのまま入れました。屋号はあとから自由に変更でき、変更の届出も要りません。確定申告書に書くだけのものなので、気負わずに決めて大丈夫です。
迷うなら「つける」で構いません。屋号付きの銀行口座を作るときに開業届の控えが必要になるので、後でつけ直すと手続きが二度手間になります。
職業:「フリーランス」
選択肢から選ぶだけです。ここは実態に合うものを選べば問題ありません。
仕事の概要:プルダウンではなく「自由入力」
ここがいちばん迷いました。プルダウンには8つの選択肢があります。
作家業/ライター業/デザイナー・イラストレーター業/漫画家業/翻訳業/通訳・通訳案内業/写真業/広告業。
「広告収入で稼いでいるのだから広告業では」と一瞬思いました。でもこれは源泉徴収の対象になる職業のリストです。ここに並んでいるのは、報酬を支払う側が所得税を天引きする決まりになっている職種です。
広告業というのは、広告主から依頼を受けて広告を制作したり媒体を手配したりする側、つまり広告代理店や広告制作会社を指します。自分のサイトを運営して、そこに広告を置いて収入を得る側は該当しません。
そこで「自由入力」を選び、こう書きました。
「デジタルコンテンツの企画・制作、インターネットを通じた情報発信・広告事業(アフィリエイト広告、電子書籍等の制作・販売、メールマガジン配信)」
この文面は自分で考えたものではありません。前回バーチャルオフィスの審査に出した事業概要書の文を、そのまま持ってきました。別々の相手に違う説明をすると、あとで食い違いが問題になります。一度どこかに書いた事業内容があるなら、それに揃えるのがいちばん安全です。
主に仕事をする場所:「自宅」
バーチャルオフィスを借りているので迷いましたが、借りた住所は納税地にしません。あれはメールマガジンに表示するための住所であって、実際に仕事をしている場所ではないからです。納税地は住所地、つまり自宅にしました。
収入の種類:「事業所得」
不動産所得と山林所得も選べますが、該当しなければチェックは不要です。
確定申告の種類:「青色申告」・簿記方式は「複式簿記」
青色申告を選ぶと、開業届と一緒に青色申告承認申請書も作られます。簿記方式は複式簿記を選びました。控除額が大きいのは複式簿記のほうだからです。
備付帳簿は、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳・預金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳の8つが自動で選ばれました。手で帳簿を作る前提の項目ですが、会計ソフトを使うなら中身は自動で用意されます。
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青色申告の期限が、4日延びた
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
青色申告承認申請書には期限があります。その年の1月16日以降に事業を始めた場合は、開業日から2か月以内。これを過ぎると、その年は青色申告が使えず、適用は翌年分からになります。
私の開業日は7月20日でした。2か月後は9月20日。ところが、その9月20日が日曜日だったのです。
国税通則法10条2項に、こういう定めがあります。
提出期限が土曜・日曜・祝日にあたるときは、その翌日が期限とみなされる。
つまり日曜が期限なら、月曜にずれます。ところがその年はさらに続きがありました。
| 9月20日(日) | 本来の期限。日曜なので翌日へ |
|---|---|
| 9月21日(月) | 敬老の日。祝日なので翌日へ |
| 9月22日(火) | 国民の休日。翌日へ |
| 9月23日(水) | 秋分の日。翌日へ |
| 9月24日(木) | ここが実際の期限 |
休日が4日続いたおかげで、期限が丸4日延びました。9月20日の時点では「1日足りない、今年は白色申告だ」と思っていたので、これは大きな違いです。
差がどれくらいかというと、青色申告特別控除と、赤字が出たときの繰越です。初年度は経費が収入を上回りやすいので、この繰越が使えるかどうかは地味に効きます。1日の勘違いで1年ずれるところでした。
もし自分の期限が土日祝に重なっていたら、諦める前にこの繰り延べを確認してください。逆に、期限が平日のど真ん中なら容赦はありません。
※ 期限の判断に迷う場合は、管轄の税務署に電話で確認するのが確実です。本記事は法的な助言ではありません。
郵送先は、税務署の住所ではなかった
書類ができたので郵送しようとして、二度見しました。作成サービスの画面に、こう書かれていたからです。
「郵送の場合は下記の住所に郵送してください」——そして表示されたのは、窓口の住所とはまったく別の市の住所でした。
国税庁が内部の事務を「業務センター」に集約していて、書類の郵送先だけが別の場所に移っている署があります。私の管轄もそうでした。窓口に持っていくなら従来どおりの税務署、郵送なら業務センター宛、という二本立てになっています。
知らずに税務署へ送っても転送はされるはずですが、日数が余計にかかります。期限が絡んでいるときに数日のロスは怖いので、必ず指定された住所を使ってください。
自分の管轄と郵送先は、国税庁のサイトで郵便番号から調べられます。作成サービスの画面に表示される場合は、それをそのまま使うのが早いです。
2025年から、控えに収受印が押されなくなった
提出したら控えに日付印を押してもらう、というのが長年の習慣でした。この印のある控えが「たしかに出した」という証拠になり、銀行口座の開設などで使われてきました。
ところが2025年1月から、税務署は控えへの収受日付印の押なつを行わなくなりました。つまり、控えを返してもらっても、そこに日付は入りません。
では何が証拠になるのかというと、郵便局で受け取る受領証です。郵送で出した書類は、消印の日付が提出日とみなされます(国税通則法22条)。特定記録や簡易書留にしておけば、引受日の記録が残ります。
私は往復とも特定記録にしました。行きは提出日の証拠として、返りは控えが確実に戻ってくるようにするためです。
どれくらいで戻ってくるのかも書いておきます。9月21日に投函して、控えが届いたのは9月30日。9日でした。ただし投函したのが3連休の初日で、税務署が動き出したのは9月24日からです。開庁日でいえば5日。
屋号付き口座の開設など、控えを使う予定が決まっているなら、2週間ほど余裕をみておくと安心です。
控えと受領証は、セットで保管してください。この2つがあれば、口座開設や審査で開業届の提示を求められたときに困りません。
郵送で用意したもの
実際に封筒へ入れたものです。
| 書類4枚 | 開業届(提出用・控え)、青色申告承認申請書(提出用・控え)。控えも同封します。手元に残すのではなく、税務署に処理してもらって返送を受けます |
|---|---|
| マイナンバー | 提出用の開業届にだけボールペンで手書き。控えには書きません。押印も不要です |
| 本人確認書類 | マイナンバーカードの表と裏をA4用紙1枚にコピー。裏は番号確認、表は身元確認に使われるので、両面必要です |
| 返信用封筒 | 長形3号に自分の住所・氏名と「行」を書いて切手を貼ったもの |
| 送付用封筒 | 長形3号。A4は三つ折りで問題ありません。表の左下に赤字で「開業届在中」 |
封筒は長形3号を2枚買うだけで足ります。角形2号でA4のまま送ることもできますが、返信用も大きくなって切手代が上がるので、三つ折りのほうが安上がりです。
郵便局の窓口で出すのをおすすめします。重さを量って正しい料金にしてくれますし、その場で消印が付きます。料金不足で戻ってくると期限に間に合いません。マイナンバーが入った封筒でもあるので、追跡が残る出し方のほうが安心です。
開業届のあとに来るもの
青色申告承認申請書で複式簿記を選んだ時点で、帳簿づけが前提の世界に入ります。複式簿記を手で付けるのは現実的ではないので、会計ソフトはほぼ必須です。
開業日を遡って登録した場合、その日以降の取引を入力し直す必要があります。私は2か月ぶんを抱えた状態で始めました。年末にまとめてやろうとすると量が手に負えなくなるので、開業届を出したタイミングで一緒に始めてしまうのが結局いちばん軽いです。
もうひとつ、控除の条件も見ておいてください。青色申告特別控除の最大額を使うには、複式簿記に加えてe-Taxでの申告(または電子帳簿保存)が必要です。紙で提出すると控除額が下がります。さらに2027年分からは、複式簿記・優良な電子帳簿の作成保存・e-Taxの3つを満たす区分が新設されます。
つまり、紙で出すつもりなら会計ソフトの必要度は下がりますが、控除も小さくなる。電子でやるなら最初からソフトで組んだほうが早い、ということになります。
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よくある質問
開業届を出さないとどうなりますか?
2026年1月1日以後の開業なら、期限は開業した年分の確定申告期限(翌年3月15日)までです(所得税法229条。2025年までの開業は事業開始から1か月以内でした)。遅れた場合の罰則規定もありません。ただし青色申告承認申請書には期限があり、こちらを逃すと控除が使えるのが翌年分からになります。実害が出るのは開業届そのものではなく、こちらの期限のほうです。
屋号はつけたほうがいいですか?
すでに使っている名前があるならつけたほうが揃います。屋号は後から変更でき、届出も不要です。屋号付きの銀行口座を開設するときには開業届の控えを求められるため、口座を分けたい場合は先につけておくと手続きが一度で済みます。
事業の概要には何を書けばいいですか?
何を作って何で収入を得ているかを具体的に書きます。他の書類で事業内容を説明したことがあるなら、その文面に合わせるのが安全です。筆者は「デジタルコンテンツの企画・制作、インターネットを通じた情報発信・広告事業(アフィリエイト広告、電子書籍等の制作・販売、メールマガジン配信)」と記載しました。
青色申告の期限が土日祝にあたったらどうなりますか?
国税通則法10条2項により、期限が土曜・日曜・祝日にあたるときは、その翌日(休日明けの最初の開庁日)が期限とみなされます。筆者の場合は期限日が日曜で、その後に祝日が3日続いたため、実質4日延びました。
開業届の控えは必要ですか?
屋号付き口座の開設や各種審査で提示を求められることがあるため、残しておくべきです。2025年1月から税務署は控えに収受日付印を押さなくなったので、郵送の場合は郵便局で受け取る特定記録などの受領証が提出日の証拠になります。控えと受領証はセットで保管してください。
まとめ
- 開業届の作成は無料。実測13分26秒で、青色申告承認申請書まで一緒にできた
- 仕事の概要は、他の書類に書いた事業内容とそろえる
- プルダウンの職業一覧は源泉徴収対象の職種。該当しないなら自由入力
- 青色申告の期限は開業日から2か月以内。土日祝にあたると翌開庁日まで延びる
- 郵送先が窓口と違う署がある。指定された住所に送る
- 2025年から控えに収受印は押されない。郵便局の受領証が提出日の証拠
- 控えも同封して、返信用封筒で返してもらう
- 投函から控えが戻るまで9日(3連休をまたいだ場合。開庁日では5日)
前回は「住所を用意する」でつまずき、今回は「出し方」でつまずきました。どちらも、やってみるまで存在を知らなかった段差です。同じところで止まっている人の時間が少し減れば、この記録を書いた意味があります。
あわせて確認しておきたいこと
- メルマガを始めたら、住所の公開が必要だった — この記事の前編。開業届がない状態で審査を通した話
- 副業ジャンル診断 — 発信で稼ぐ以外の選択肢も含めて、自分に向く副業を5問で
- 副業の税金シミュレーター — 開業後の税額の目安に
- 手取り年収シミュレーター — 本業と合わせた世帯の手取りの把握に