退職金と税金のガイド

iDeCoの10年ルールとは?
受け取り順の比較表

2026年1月から、iDeCoと退職金の受け取り方で税金が変わる条件が広がりました。4つの例で、何歳で受け取るといくらになるかを並べます。

iDeCoを60歳で受け取って、退職金は65歳。少し前まではこの受け取り方で税金を抑えられると言われていましたが、2026年1月からは事情が変わりました。iDeCoを先に受け取ったあと、10年あけずに退職金を受け取ると、退職金の控除が減るようになったからです。

  • 10年ルールと19年ルールの違い
  • 退職金を60歳・65歳・70歳で受け取る4つの例の比較表
  • 「控除が丸ごと消える」とは限らない理由
  • 自分の金額で比べる方法

結論:iDeCoが先でも、10年あけないと退職金の控除が減る

iDeCoを一時金で受け取ったお金も、退職金も、税金の上ではどちらも「退職所得」です。会社に勤めながらiDeCoに掛金を出していた期間は、2つの勤続年数が重なっているので、後から受け取るほうの控除から、重なった年数ぶんの控除が差し引かれます。

iDeCoを先に受け取る場合、この差し引きがかかるのは「退職金を受け取る年の前年以前4年内にiDeCoを受け取った場合」でした。それが令和7年度の税制改正で「前年以前9年内」に延びています。2026年1月1日以後に受け取るiDeCoなど確定拠出年金の一時金が対象です。

つまり、iDeCoを受け取った年から10年以上あけて退職金を受け取らないと、退職金の控除は減るということです。これが「10年ルール」と呼ばれています。iDeCoは原則60歳からしか受け取れないので、退職金を69歳までに受け取る人は、iDeCoを先にしても10年ルールを避けられません。

10年ルールと19年ルールの違い

受け取る順番によって、見る期間と、減るほうが変わります。

受け取り方控除が減る条件減るほう
iDeCoが先 → 退職金iDeCoを受け取った年の翌年から9年以内に退職金(10年ルール)
2025年までは4年以内(5年ルール)
退職金の控除
退職金が先 → iDeCo退職金を受け取った年の翌年から19年以内にiDeCo(19年ルール)iDeCoの控除
同じ年に両方差し引きではなく、勤続年数と掛金の年数を通算して控除を1回で計算—

年は暦年(1〜12月)で数えます。退職金が先の場合は20年あける必要があり、iDeCoの受け取り開始は75歳までなので、55歳以前に退職金を受け取った人でないと避けられません。

4つの例で比べる:iDeCoを何歳で受け取ると税金はいくら?

退職金を受け取る年齢は会社の規程で決まっていることが多いので、ここでは退職金の年齢を固定して、iDeCoを受け取る年齢だけを動かしました。税金は所得税(復興特別所得税を含む)と住民税の合計です。iDeCoの掛金はどの例も60歳まで出したものとしています。

例1:60歳の定年で退職金を受け取る

退職金1,500万円・勤続38年(22〜60歳)/iDeCo800万円・掛金25年(35〜60歳)

iDeCoを受け取る年齢何が起きるか税金の合計
60歳(同じ年)38年を通算した控除2,060万円を、合計2,300万円に使う181,260円
61〜75歳(後)退職金は非課税。iDeCoの控除は1,150万円から680万円減って470万円に249,232円

60歳で退職金を受け取る場合、iDeCoを先に受け取ることはできません。選べるのは「同じ年」か「後」で、この例では同じ年のほうが約6.8万円少なくなりました。

例2:再雇用のあと65歳で退職金を受け取る

退職金2,000万円・勤続43年(22〜65歳)/iDeCo600万円・掛金20年(40〜60歳)

iDeCoを受け取る年齢何が起きるか税金の合計
60〜64歳(先)iDeCoは控除800万円の枠内で非課税。10年ルールで退職金の控除が2,410万円から600万円減る143,497円
65歳(同じ年)43年を通算した控除2,410万円を、合計2,600万円に使う143,497円
66〜75歳(後)退職金は非課税。19年ルールでiDeCoの控除が760万円減り、下限の80万円に425,912円

以前なら「60歳でiDeCo、65歳で退職金」で両方とも控除を満額使えましたが、いまは10年ルールがかかります。それでも、この例では先に受け取るのと同じ年にまとめるのが同額でいちばん少なく、後に回すと約28万円多くなりました。

例3:例2でiDeCoの一時金が1,200万円の場合

退職金2,000万円・勤続43年(22〜65歳)/iDeCo1,200万円・掛金25年(35〜60歳)

iDeCoを受け取る年齢何が起きるか税金の合計
60〜64歳(先)iDeCoは控除1,150万円を少し超える。退職金の控除は1,150万円減って1,260万円に726,825円
65歳(同じ年)控除2,410万円を、合計3,200万円に使う765,112円
66〜75歳(後)iDeCoの控除が1,080万円減り、下限の80万円に1,267,042円

iDeCoが大きくなると、10年ルールがかかっても先に受け取るほうが同じ年より約3.8万円少なくなりました。課税される部分が2つの年に分かれ、所得税の累進(課税される額が大きいほど税率が上がる仕組み)がゆるむためです。

例4:70歳まで働いて退職金を受け取る

退職金2,500万円・勤続48年(22〜70歳)/iDeCo800万円・掛金25年(35〜60歳)

iDeCoを受け取る年齢何が起きるか税金の合計
60歳(10年前)10年あくので調整なし。どちらも控除の枠内で非課税0円
61〜69歳(先)10年ルールで退職金の控除が2,760万円から800万円減る446,122円
70歳(同じ年)48年を通算した控除2,760万円を、合計3,300万円に使う446,122円
71〜75歳(後)iDeCoの控除1,150万円がまるごと減り、下限の80万円に658,643円

60歳と61歳の1年違いで、税金が約45万円変わります。10年ルールの境目がはっきり出る例です。

上記はiDeCoと退職金の受け取り順シミュレーターと同じ計算で出した概算です。

「控除が丸ごと消える」とは限らない

例2で、iDeCoの掛金期間と勤続期間の重なりは20年(40〜60歳)です。20年ぶんの控除は800万円なのに、10年ルールで退職金の控除から減ったのは600万円でした。

これは、先に受け取ったほうの金額が、そのお金自身の控除額より少ない場合、重なっている期間を短くして計算する決まりがあるためです(所得税法施行令70条2項)。

先に受け取った額が800万円以下 → 受け取った額 ÷ 40万円 年(端数は切り捨て)
800万円を超える → (受け取った額 − 800万円)÷ 70万円 + 20 年

iDeCo600万円なら「600万円÷40万円=15年」とみなすので、減るのは15年ぶんの600万円です。退職金を先に受け取る場合も同じで、退職金が自分の控除枠より少なければ、iDeCoの控除から減る額は小さくなります。

「10年ルールに当たる=重なった年数ぶんの控除がすべて消える」と書かれた説明は、先に受け取る額が大きい場合の話です。先に受け取る額が控除の枠に収まっているなら、減るのはおおむね「その額ぶん」と考えると、例2で「先」と「同じ年」が同じ税額になった理由がわかります。

退職金を先に受け取ると、いつも損なのか

4つの例では、iDeCoを退職金より後に回すと、いずれも税金がいちばん多くなりました。退職金を先に受け取ると、19年ルールでiDeCoの控除が大きく減り、下限の80万円まで落ちることが多いためです。

ただし、いつもそうなるとは限りません。たとえば退職金2,000万円・勤続38年・60歳で受け取り、iDeCo600万円・掛金20年の場合は、同じ年にまとめると446,122円、後に回すと425,912円で、後のほうが約2万円少なくなります。後に回すと、退職金の控除2,060万円のうち60万円は使い切れずに余りますが、iDeCo側にも下限の80万円の控除が残るので、使える控除の合計が同じ年より20万円多くなるためです。

差がつく条件は金額と期間の組み合わせで変わるので、一般論で決めずに、自分の数字で比べるのが確実です。

自分の金額で比べる

退職金とiDeCoの見込み額、勤続年数と掛金の年数を入れると、iDeCoを受け取る年齢ごとの税金を比較表で出せます。無料・登録不要で、入力した金額は端末の中だけで処理されます。

受け取る年齢ごとに税金を比べる

入力した金額はサーバーへ送信・保存されません。

年金で受け取る場合

iDeCoは一時金のほか、5〜20年の年金や、一時金と年金の組み合わせでも受け取れます。年金で受け取る分は退職所得ではなく雑所得で、公的年金等控除の対象です。10年ルールや19年ルールの調整とは関係しません。

ただし公的年金と合算して課税されるため、年金の額やほかの所得によって税額が変わり、国民健康保険料や介護保険料に影響することもあります。一時金の税金が大きく出たときは、年金受け取りや併用も含めて、受け取る先の金融機関や税務署で確認してください。

よくある質問

iDeCoの10年ルールはいつからですか?

2026年1月1日以後に受け取るiDeCoなど確定拠出年金の一時金が対象です。それより前に受け取った一時金は、従来どおり前年以前4年内(いわゆる5年ルール)で判定します。

10年ルールに当たると、退職金の控除はいくら減りますか?

iDeCoの掛金期間と勤続期間が重なっている年数ぶんの控除額が減ります。重なりが20年なら800万円です。ただしiDeCoの一時金が、iDeCo自身の退職所得控除額より少ない場合は、重なりを「一時金÷40万円」年に短くして計算するので、減る額はもっと小さくなります。

退職金を先に受け取るのはよくないのですか?

退職金を先に受け取ると、その後19年以内に受け取るiDeCoの控除から、重なった期間の控除が差し引かれます。この記事の4つの例ではいずれも税金がいちばん多くなりましたが、条件によっては逆転することもあります。金額と期間で比べるのが確実です。

iDeCoを年金で受け取れば10年ルールは関係ありませんか?

年金で受け取る分は退職所得ではなく雑所得になるため、退職所得控除の調整は関係しません。ただし公的年金と合算して課税され、国民健康保険料などに影響することもあるので、一時金との比較は別に必要です。

まとめ

  • iDeCoも退職金も「退職所得」。期間が重なると、後から受け取るほうの控除が減る
  • 2026年1月から、iDeCoが先なら「10年あけないと」退職金の控除が減る(以前は5年)
  • 退職金が先なら、19年以内に受け取るiDeCoの控除が減る
  • 同じ年なら、期間を通算して控除を1回で計算する
  • 先に受け取った額が控除の枠より小さければ、減る控除もその額ぶんに近くなる
  • 4つの例では、iDeCoを退職金より後に回すと税金がいちばん多かった(例外もある)
  • iDeCoが大きいと、先に受け取るほうが同じ年より少なくなることがある
  • 退職金を70歳以降に受け取るなら、iDeCoを10年前に受け取ると調整を避けられる

出典

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