給付金の解説

「退職給付金」という
制度はありません

正体は失業保険です。呼び名が違うだけで、自分で申請すれば費用はかかりません。

「退職給付金を最大28か月・◯百万円受け取れる」「知らないと損する退職給付金」——こうした広告を見て、そんな制度があるのかと調べに来た方に向けた記事です。結論から書くと、その名前の制度はありません。呼び名の正体と、広告に出てくる数字の内訳、そして自分で受け取る手順を整理します。

  • 「退職給付金」が何を指しているのか
  • 「最大28か月」という数字はどこから来たのか
  • 申請サポート契約について公表されている相談内容
  • 自分で申請する手順(無料)

結論:「退職給付金」は失業保険の別の呼び方

国民生活センターが2025年12月3日に公表した資料に、そのままの説明があります。

雇用保険制度に基づく失業等給付(一般に「失業保険」や「失業手当」、「失業給付」、「退職給付金」などと呼ばれることもある。)は、仕事を失った人が生活を維持しながら再就職を目指すための公的支援制度です。

つまり「退職給付金」は、雇用保険の失業等給付(制度としての名前は「基本手当」)を指す通称のひとつです。ハローワークや厚生労働省の公式ページにこの名前の制度は出てきません。探しても見つからないのは、あなたの探し方の問題ではありません。

出典:国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意-不正受給を促すかのようなケースも!-」https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20251203_1.html

「最大28か月」の内訳は、2つの別の制度を足した数字

広告で目にする「最長28か月」「最大◯百万円」は、次の2つを合計したものです。

制度どこの制度か期間
傷病手当金健康保険(協会けんぽ・健保組合)支給開始日から通算して1年6か月(約18か月)
基本手当(失業保険)雇用保険(ハローワーク)最長330日(約11か月)

足すと約29か月。ここから「最大28か月」という数字が出てきます。ただしこれは理論上の上限です。両方を上限まで受け取るには、次の条件が重なる必要があります。

  • 病気やけがで働けない状態が続き、傷病手当金を1年6か月分受け切る
  • その間に失業保険の受給期間の延長を申請しておく(原則1年の受給期間を、働けない日数分だけ最長3年まで延長できます)
  • 基本手当の所定給付日数が330日に当たる区分である(45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上、かつ倒産・解雇等による離職など)

330日という日数は、特定受給資格者の表のなかで最も長い区分です。自己都合退職の場合、所定給付日数は90日から150日しかありません。「28か月」は多くの人に当てはまる数字ではありません。

所定給付日数の全区分は 失業保険(基本手当)の解説ページ に表で載せています。

申請サポートについて公表されている相談内容

国民生活センターによると、「失業保険の受給額や受給期間が増える」とうたう申請サポートに関する相談が増えています。

年度相談件数
2021年度42件
2024年度217件
2025年度(10月31日まで)216件

目立つ相談は3つの型に分かれています。

  • サポートを依頼すれば受給額が増えると期待したが、実際には増えなかった
  • 途中で解約を希望したが、事業者が認めなかったり、違約金を請求された
  • うつ病などのメンタルの不調はないにもかかわらず、指定のクリニックで受診するよう指示されるなど、不正受給を促すかのような誘導をされた

1つめについては、そもそも増える余地がありません。給付額は離職前6か月の賃金から計算され、給付日数は離職理由・年齢・被保険者期間で決まります。第三者が代わりに手続きしても、この計算式は変わりません。

3つめが最も重い:不正受給になると何が起きるか

働けない状態ではないのに傷病手当金を申請する、就労を申告しないといった行為は不正受給にあたります。ハローワークは処分の内容を公表しています。

支給停止不正行為があった日以降、基本手当等が一切支給されません
返還命令不正に受給した金額はもちろん、不正を行った日以後に受給した金額も直ちに全額返還
納付命令返還とは別に、不正受給額の2倍に相当する額以下の納付。合わせていわゆる「3倍返し」
延滞金返還・納付し終える日まで年率5%。納付を怠ると財産の差押え等が行われる場合があります
刑事告発悪質な場合は警察等へ告発され、詐欺罪などにより処罰されることがあります

ここで責任を問われるのは申請した本人です。業者に勧められたという事情は、返還命令や納付命令を免れる理由にはなりません。

出典:ハローワークインターネットサービス「不正受給の典型例」https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_dishonesty.html/北海道ハローワーク「不正受給の処分について」

自分で申請する手順(費用はかかりません)

  1. 会社から雇用保険被保険者離職票(-1、-2)を受け取る
  2. 住所地を管轄するハローワークで求職の申込みを行い、離職票を提出して受給資格の決定を受ける
  3. 雇用保険受給説明会に出席し、受給資格者証と失業認定申告書を受け取る
  4. 4週間ごとの失業認定日にハローワークへ行き、認定を受ける(認定対象期間中に原則2回以上の求職活動の実績が必要)
  5. 認定日から通常5営業日で口座に振り込まれる

持ち物は、離職票、マイナンバー確認書類、身元確認書類、写真2枚(マイナンバーカードの提示で省略可)、本人名義の預金通帳またはキャッシュカードです。

待つ期間は制度で決まっている

7日間の待期は離職理由に関係なく全員にあります。正当な理由がない自己都合退職の場合、その後さらに原則1か月の給付制限があります(2025年4月1日以降に離職した場合。それ以前の離職は原則2か月)。会社都合などの特定受給資格者には給付制限がなく、待期の後すぐ支給が始まります。

なお2025年4月以降は、リ・スキリングのために自ら教育訓練等を受けた場合、自己都合退職でも給付制限が解除されます。早く受け取りたい場合に使える、公式の選択肢です。

出典:厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00045.html

すでに契約してしまった場合

契約内容や解約条件に不安がある場合、事業者とのやり取りを続ける前に相談先があります。

  • 消費者ホットライン 188(いやや!)— 最寄りの市町村・都道府県の消費生活センター等を案内してもらえます
  • ハローワーク — 自分が受給できる日数や金額そのものは、窓口で無料で確認できます

すでに事実と異なる申請をしてしまった場合も、自分からハローワークに申し出るほうが、後から発覚するより結果は軽くなります。

よくある質問

「退職給付金」という制度は本当にないのですか?

その名前の独立した制度はありません。国民生活センターの資料では、雇用保険制度に基づく失業等給付が「失業保険」「失業手当」「失業給付」「退職給付金」などと呼ばれることもあると説明されています。つまり「退職給付金」は失業保険の別の呼び方です。

広告にある「最大28か月」はどこから出た数字ですか?

健康保険の傷病手当金が支給開始日から通算して1年6か月(約18か月)、雇用保険の基本手当が最長330日(約11か月)で、これを足した理論上の上限です。ただし傷病手当金を1年6か月分受け切り、かつ基本手当の所定給付日数が330日に当たる条件(年齢45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上、かつ倒産・解雇等による離職など)を満たす人に限られます。誰でも28か月もらえるという意味ではありません。

申請サポート業者に頼むと受給額は増えますか?

増えません。給付額や給付日数は退職理由・勤務年数・賃金によって決まり、ハローワークの審査で確定します。国民生活センターには、受給額が増えると期待して契約したが増えなかった、という相談が寄せられています。

自分で申請するにはどうすればいいですか?

会社から受け取った離職票と、マイナンバー確認書類・身元確認書類・本人名義の預金通帳などを持って、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みを行います。費用はかかりません。7日間の待期期間の後、正当な理由がない自己都合退職の場合はさらに原則1か月の給付制限を経て、4週間ごとの失業の認定を受けて支給されます。

まとめ

  • 「退職給付金」という制度はない。雇用保険の失業等給付(基本手当)の別の呼び方
  • 「最大28か月」は傷病手当金1年6か月+基本手当330日を足した理論上の上限
  • 自己都合退職の所定給付日数は90〜150日で、28か月にはならない
  • 給付額はハローワークの審査で決まり、第三者に依頼して増えるものではない
  • 受給額が増えなかった・解約できない・不正受給を促されたという相談が公表されている
  • 不正受給は本人の責任になる(3倍返し・年率5%の延滞金・刑事告発)
  • 申請はハローワークで自分でできて、費用はかからない
  • 早く受け取りたい場合は、教育訓練による給付制限の解除という公式の手段がある

退職後に使える制度は失業保険だけではありません。健康保険・年金・住居費・医療費まで含めて、該当しうるものをまとめて確認できます。

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